ことあれかしだった

ちいさい怪談や奇譚を細々と書いています

雷の記憶

今日はタイトル先行型です。

いつもは本文を書き終わってからタイトルつけてます。

小説のようなものを書くときは反対で、けっこうタイトル先行で書くことが多いです。

↑これなんかはその最たるもので、春琴抄とか青炎抄とかかっこいいな〜わたしも抄っていう字使いたいな〜〜から生まれました。

 

今お外で雷がゴロゴロしていて、時々窓がピカピカ光ります。

雷って好きですか。

わたしは結構好きです。

一番古い記憶を辿ってみると、保育園に通っていたころ、寒い寒い冬のことでした。

お習字のお稽古が終わって一人でとぼとぼ歩いていると、うっすらゴロゴロが聞こえました。

見上げた先は澄み渡る冬の透明な空で、端っこにちょろっと黒雲がいたので、そこから聞こえてくるんだろうなと思いました。

家に帰って、畳んだ布団の上に寝転んでカービィの攻略本を眺めていました。

しばらくすると、なんとなく身の回りが暗くなってきて、あーさっきの雲がここまできたんだなーとウトウトしながら考えていました。

そのうちに窓がピカピカしだして、雨のざーざー降る音も一緒に聞こえてきましたが、わたしにはその音が気持ちよくて、雨と雷の音に包まれながら、お昼寝タイムに入るのでした。

窓に雨の打ちつけるサラサラとした影。

それを透かしてまたたく静かな光。

今もわたしの中で、なにか聖なるもののように、厳かに佇んでいます。

 

小学生になって、犬を連れて小さな森に入りました。

やっぱり寒い寒い冬の日で、雪が積もって森は白くなっていました。

てきとうにウロウロしていると少し開けた場所に出て、目の前に大きな木が折れて倒れているのが現れました。

雪で真っ白になっているその倒木を見た途端、わたしの中であの雷の日のことがフラッシュバックし、あの日の雷で倒れた木なんだと思うと、とても嬉しくなりました。

今となってはそんな訳ないと思うのですが、当時のわたしはそれを信じて疑わず、犬と一緒に木に駆け寄ると、上に座って澄み渡る冬の空をいつまでも眺めていたのでした。

葉の落ちた木々に飾られた透明な空の、散乱スペクトルの彼方で歌う季節外れの遠雷の、確かに子供の耳の奥で、その音は。

時間が経ちすぎたのでしょうか。

今はもう聞こえません。

 

では!