ことあれかしだった

ちいさい怪談や奇譚を細々と書いています

変な話7

こんな話を聞きました。

 

半田さんの家には件がいたそうです。

ja.wikipedia.org

 

件とは、ざっくり申し上げると、予言して死ぬ人面牛です。

「牛なんか飼ってんの?」

「牛じゃないんだけどさ」

一時はブリーダーを志したほどのウサギ好きで、家に何羽もウサギがいるそうです。

繁殖も何度か行っているらしく、里親に出したり自分で飼ったりと、ウサギライフを満喫しています。

「でさ、たまに生まれるのよ」

なんでも生まれた子ウサギたちの中に、ごく稀に人面ウサギが混じっていて、

「なんかさー、映画のグレムリンにさ、かわいいのいるじゃん」

「ギズモ?」

「そうそう。ギズモちゃん。あんな顔してんの」

他の子達がおっぱいを飲んでいる中、ギズモは離れた所でぼんやりしています。

生まれたときから目が開いていて、通常そんな赤ちゃんは長生きするのが難しいそうです。

半田さんが、「大丈夫?」と声をかけると、大きな目をこちらへ向けます。

そうして口を開けて舌を出すと、「へっ。へっ」といったような音を出します。

その後、たいてい意味がわからない言葉を発するそうです。

「みぬらむち。けれてめれいえ。みたいな、そんな感じ」

なにが? と思っている内に母ウサギが来て、ギズモを食べてしまいます。

これも普通のウサギでもごく稀に見られる行動だそうです。

出産のストレスや、人間のにおいがついてしまった場合など、パニックのようなものなのだろうと半田さんは言っていました。

ただ、ギズモが生まれた場合は、放っておくと今のところ100%、母ウサギに食べられてしまうのだそうです。

「すごく切ない気持ちになる。ギズモちゃんが件的なもので、何かの予言をしてたとして、何語なんだろう。日本語じゃないよね、多分。意味わかんないし。私には何を言ってるのかわからないのに、私に何かを伝えようとするのよ。いつも。でも私にはわからない。じゃあこの子は何のために生まれてきたの? って思っちゃう。だから、大人になったギズモちゃんが見たくて、いつも助けようとするんだけどさ、駄目なんだよね。いっつも」

半田さんは涙ぐみながらそう話していました。

奇形かなんかのウサギが生まれて、変な鳴き声を出すってことあるんでしょうか。

それが件だったとしても、件っぽい単なる奇形だったとしても、生きてさえくれれば半田さんは愛して育てるんだろうなと、ウサギ好きの心意気を垣間見たのでした。

 

では!