こんな話を聞きました。
半田さんの家には件がいたそうです。
件とは、ざっくり申し上げると、予言して死ぬ人面牛です。
「牛なんか飼ってんの?」
「牛じゃないんだけどさ」
一時はブリーダーを志したほどのウサギ好きで、家に何羽もウサギがいるそうです。
繁殖も何度か行っているらしく、里親に出したり自分で飼ったりと、ウサギライフを満喫しています。
「でさ、たまに生まれるのよ」
なんでも生まれた子ウサギたちの中に、ごく稀に人面ウサギが混じっていて、
「なんかさー、映画のグレムリンにさ、かわいいのいるじゃん」
「ギズモ?」
「そうそう。ギズモちゃん。あんな顔してんの」
他の子達がおっぱいを飲んでいる中、ギズモは離れた所でぼんやりしています。
生まれたときから目が開いていて、通常そんな赤ちゃんは長生きするのが難しいそうです。
半田さんが、「大丈夫?」と声をかけると、大きな目をこちらへ向けます。
そうして口を開けて舌を出すと、「へっ。へっ」といったような音を出します。
その後、たいてい意味がわからない言葉を発するそうです。
「みぬらむち。けれてめれいえ。みたいな、そんな感じ」
なにが? と思っている内に母ウサギが来て、ギズモを食べてしまいます。
これも普通のウサギでもごく稀に見られる行動だそうです。
出産のストレスや、人間のにおいがついてしまった場合など、パニックのようなものなのだろうと半田さんは言っていました。
ただ、ギズモが生まれた場合は、放っておくと今のところ100%、母ウサギに食べられてしまうのだそうです。
「すごく切ない気持ちになる。ギズモちゃんが件的なもので、何かの予言をしてたとして、何語なんだろう。日本語じゃないよね、多分。意味わかんないし。私には何を言ってるのかわからないのに、私に何かを伝えようとするのよ。いつも。でも私にはわからない。じゃあこの子は何のために生まれてきたの? って思っちゃう。だから、大人になったギズモちゃんが見たくて、いつも助けようとするんだけどさ、駄目なんだよね。いっつも」
半田さんは涙ぐみながらそう話していました。
奇形かなんかのウサギが生まれて、変な鳴き声を出すってことあるんでしょうか。
それが件だったとしても、件っぽい単なる奇形だったとしても、生きてさえくれれば半田さんは愛して育てるんだろうなと、ウサギ好きの心意気を垣間見たのでした。
では!