ことあれかしだった

ちいさい怪談や奇譚を細々と書いています

変な話2

こんな話を聞きました。

 

Aさんが大学生の頃の話だそうです。

いつものように講義をサボって学内をフラフラしていると、同期のBさんがやってきました。

「お前A今日暇だろ。夜肝試ししようぜ」

「いいよ」

「C子とD先輩とE男とF美とGさんとH君とIちゃんも来るってさ」

「えらい大所帯やね」

 

夜になって、皆が集まったのでD先輩のハイエースに乗ってでかけました。

ついた先は近所でも有名な心霊スポットで、旧道のトンネルの中に廃神社があって、その横にある首のないお地蔵さんの影から白いワンピースの女が時速100キロで追いかけてきて追いつかれたら即死というどえらい場所でした。

霊感があるF美は「絶対行きたくない悪いことが起こる」と乗り気ではありませんでしたが、運転手のH君以外は全員酔っ払いだったので提案は却下され、みんなしてぞろぞろとトンネルに入っていったそうです。

BさんとD先輩が「オルルァ!」奇声を発しながら先導します。

Aさんは、その光景を頼もしく感じる一方で、「俺なんでこんなDQN共とツルんでるんやろ」と冷静になっていました。

「ひゃーこわい」と言いながらカメラを回すE男。

「離さないでね」と言ってAさんの腕にすがるIちゃん。

「21世紀にもなってこんなオカルト信じるわけ?」とツンデレなC子。

先程から何も喋らないGさん。

敵か味方かH君。

なんだこれ。

やがて向こうに神社が見えてきました。

トンネルは車一台がなんとか通れる程度の大きさだったそうです。

懐中電灯の光に浮かび上がったのは、立派な境内でした。

しかしサイズがサイズですから、ミニチュアのような感じで人が入れるようなものではありません。

なんだこれ。

「おっしゃこれやな」と言ってD先輩が神社に蹴りを入れました。

「D先輩流石っす」と言いながら、Bは横にあった首なし地蔵に蹴りを入れます。

「出てこいやオラァ!」

このサイズ感だと白いワンピースの女が出てきたところで、ずいぶんちいさいんじゃないのとAさんは思いました。

結局、白いワンピースの女なるものは出てきませんでした。

一同、なんだかシラけた感じでトンネルの向こう側へ出て、行きのテンションはどこへやら、なんだかシラけた感じで復路を行って、家路についたそうです。

 

「内容の割に情報量の多い話だなあ。H君とか要る?」

わたしが率直な感想を述べると、Aさんは言いました。

「要る要る。これ俺の主観の話なんだけども、実際は違うからね」

「ん?」

Aさんは困ったような顔で言いました。

「ないのよ。そんなトンネル。あるわけないやん。だいたいそんな神社とかトンネルの中に建てる意味ないし、地蔵とかもイミフやろ。神仏習合かよ」

わたしは不覚にも笑ってしまいましたが、Aさんは真剣です。

「全部ウソやったわけよ。Bも、C子も、D先輩も、E男も、F美も、Gさんも、H君も、Iちゃんも、俺がその訳わからんトンネルにいる頃全員自殺してたんやから」

「えええええええええ」

俺は一人でどこで何してたんやろねえ、とAさんはため息をつくのでした。

 

では!