ことあれかしだった

ちいさい怪談や奇譚を細々と書いています

転々

転々と、町から町へと渡っていた時期があります。

流浪を気取っていたわけではなく、仕事の都合ですが。

廃墟めぐりが趣味で、特に廃村に非常な魅力を感じていたので、面白そうなところを見つけては立ち寄ってみるようなことをやってました。

別に霊的なものを求めているわけではなく、古いものや滅びてしまったものが好きなんでしょうね、同じ理由で神社仏閣も好きですし、山の中の無人駅とかワクワクします。

 

印象に残っているのは、水族館の廃墟、新興宗教施設の廃墟、スキー場の廃墟、あと地元の廃村、とか。

特に地元の廃村は地元なだけあってすぐに行けるので、暇さえあれば行ってだらだらしていました。

行く途中の山道に2~3軒、またたどり着いたら5~6軒ぐらいの家があって、もちろん全部廃屋なのでボロボロですが、中を覗くと昔の新聞とかおもちゃとかが残っていてとても風情がありました。

村の真ん中には川が通っていて、橋を渡ると奥にも数軒の家、また畑や田んぼの跡があって、人なんかもちろん誰も来ないので、村というよりは、山の中で人の痕跡を見つけたって感じです。

いつか家の一軒を買い取って、フルリノベして住もうかなレベルに好きだったのですが、あるとき大きな台風が来て、村へ続く道が通れたものではなくなってしまいました。

しばらく経ってから訪れてみると、途中の廃屋が潰れたりしていたので嫌な予感はしたのですが、案の定、何軒かの家は屋根に潰されて、また村の真ん中にかかっていた橋は流されていました。

そのとき感じたのは、悲しさではなく、さみしさでもない、好きなものが時の流れに任せて滅びていくさまを目の当たりにできたという、、なんだろう、上手く言えません。

それからその廃村には行っていません。

感傷からではなく、単に引っ越したからです。

今はもっと荒廃して趣深くなってるんだろうなーと思いますが、折を見てまた行けたらいいな。

 

んで、引っ越した先が変な町で、荷解きが落ち着いたので散歩でもすっかなと思ってその辺をうろうろしていたのですが、普通の住宅地の変なところに山へ入る石段があり、神社かなと思いながら上っていくと何もない広場でした。

奥まで行ってみると大きな石碑のようなものが立っており、随分古そうなので何やろと思って表の碑文を読もうとしたのですが、難しすぎて読めませんでした。

すると急に石碑の裏から中学生ぐらいの坊主頭の男の子がたくさん出てきて、口々にこんにちは! と言いながらわたしの脇をすり抜け、石段を下って行きました。

大勢いましたし、みんな坊主だったので、野球部かなと思ったのですが、石碑の裏で何やってたんだろ。

ほかにも小さいデパートのフードコートでかなり本格的な英語を教えてくれるおじさんがいたり、クリーニング屋さんが近所の大島てる掲載物件に異様に詳しかったり、靴屋さんの廃墟を見つけてよっしゃと思った数日後、お年寄りに布団や健康食品を売る会会場になっていたり、昔のドライブインみたいなダイナーで食べるカレーがめちゃくちゃ美味しかったり、廃墟は少ない町でしたが大好きでした。

 

では!